2024.10.18 NEW
以前ご相談いただいたとあるメーカー様(以下、A社)のお話。
A社では各種の動力機関を製造していますが、いずれもリスト規制品に該当する仕様のものは含まれていません。しかしお話を伺ってみると、グループA国を含むすべての地域への輸出に際し事前許可を得るよう審査課から要請されているとのこと。CISTEC試験の初級者でもはっきり×が付けられるようなA社からのご相談内容に、当初は大きな違和感を覚えました。
しかしお話を伺っていくなかで、当該要請は昨今の世界情勢を鑑み当局からA社へ独自に発せられた「行政指導」だという結論に至りました。行政指導ということであれば、当局側からは所掌事務の範囲内で自由に作為・不作為を求めることが可能となり、本件においてはグループA国に対してもキャッチオール規制の適用が要請されているという構図となっていたのです。しかしその一方で、行政指導については行政手続法第32条の規定にあるとおり、従うかどうかはあくまで名宛人の裁量に委ねられています。すなわち、自由な販売活動が制限されることにより被る不利益と、当局の要請に従うことで得られる利益とを天秤にかけ、どこまで応対するかというA社の選択の問題となるのです。
最終的には当社がA社と当局の間に入ることで以降の輸出はスムーズに進められることとなり、A社とは未だに長いお付き合いをさせていただいているのですが、本件は安全保障貿易管理のようで安全保障貿易管理ではない、木を見て森を見ずでは対応できなかった行政法規に関係するケーススタディとなりました。